聖書ヘブライ語 名詞
1.名詞は「性別と数」がある
英語と同じように、聖書ヘブライ語の名詞は単数形と複数形という「数」がついている。また、2つ、ペアの組という「双数」の数もある。
また、英語以外のヨーロッパ言語のように、聖書ヘブライ語は名詞に性別がある。それは、男っぽい、女性らしいとかからではなく、文法上だけの性質である。しかし、性別があることを通して動詞や形容詞を合わせないといけないから、言葉がどう掛り合っているかがわかるという便利な機能がある。
名詞の例 馬 「סוּס」
男性単数形 סוּס
男性複数形 סוּסִים 語尾に「~イム」
女性単数形 סוּסָה 語尾に「~ア」
女性複数形 סוּסוֹת 語尾に「オート」
双数形は少ないのですが、語尾に「~アイム」がつく。
2.形容詞は名詞と合わせます
名詞と同じ上記の語尾は形容詞につけて合わせます。形容詞は名詞の後につける。
「良い馬(女性複数)」 סוּסוֹת טוֹבוֹת
3.定冠詞と接続詞
定冠詞とは、英語の「the」で、特定のものを指している意味になる。単語の始まりに「הַ」とダゲシュをつける。
言葉 דָּבָר
その言葉 הַדָּבָר
喉音とレシュはダゲッシュを受けられないので、「הַ」ではなく「הָ」になる。
光 אוֹר
その光 הָאוֹר
また、「הָ」「חָ」「עָ」から始まる単語だと、冠詞は「הֶ」になる場合が多い。
その悪さ הֶחָמָס
その山々 הֶהָרִים
単語の始まりに「וְ(ウェ)」をつけると、「and」や「but」の接続詞になる。
4. 前置詞、接続詞等
ヘブライ語には「וְ」のような接頭辞がいくつかありまして、覚えると大変便利になります。
に=「〇〇ב」 創世記1:1「…בְּרֵאשִׁ֖ית」(初め+に)「רֵאשִׁית」+「〇〇ב」
あて、に向けて=「〇〇ל」
のように=「〇〇כ」
より、から=「〇〇מ」 *下記のように単独で「 מִן」が元です
またよく見かける前置詞、接続詞、特別代名詞等も一緒に覚えましょう。
を=「אֵת」、「אֶת־」
なぜなら=「כִּי」
へ、に=「אֶל」 *「א」と「ע」を区別していくことが大切です
の上に、にて=「עַל」 *「א」と「ע」を区別していくことが大切です
から、より 「 מִן」 *上記のように接頭辞になるようにくっつくことある。
と=「עִם」 *「א」と「ע」を区別していくことが大切です
もし=「אִם」 *「א」と「ע」を区別していくことが大切です
あるいは=「אוֹ」
否定詞(する⇒しない)=「לֹא」
この=「זֶה 」
その・あの=「הוּא」
どの・何=「מָה」
だれ=「 מִי」
関係代名詞(英「which」等)=「אֲשֶֹׁר」
5.代名詞
ヘブライ語では、英語と同じように代名詞を使う。
代名詞を省略して、動詞の語尾に着けて直接目的語にしたり、名詞の語尾につけて所有格にしたりする。また前置詞に着けることも多くみられる。
6.【中辛】 接尾辞、接頭辞と母音の変換
注!ここから、母音の変換の傾向を説明していくが、ルールに従わなく個別に覚えるものもあるのでご注意ください。
このところはまた戻ってくるといいかもしれないが、ヘブライ語では、接尾辞や接頭辞を言葉にくっつけると母音が変わったりする。母音のパターンが変わるということで響きがヒントになってくるので、口にしてみて覚えると良い。
6.1 音節
ヘブライ語の音節は母音から始まることはない。
ヘブライ語の音節には2種類がある:①開音節(「子音+母音」、例「שָׁ」)②閉音節(「子音+母音+子音」、例「לַח」)
一般的には、単語の最後の音節にアクセント(強勢音節)が来る。
6.2 音節の分類
音節は強勢音節からの距離で分類される。「דְּבָרִים」((複数の)言葉)だと、最後の音節「רִים」に強勢音が来るので①強勢音節になる。強勢音節の一つ前の音節「בָ」は②強勢前音節になる。そして強勢音節の二つ前の音節「דְּ」は③強勢前々音節である。それぞれの分類に仕える母音が違ってきて、ルールがある。
6.3 音節の分類と母音の長さ
6.4 シェバーにならない母音
変更によってシェバーになるパターンがある(↓)。しかし、①長母音と②閉音節にある母音はシェバーにならない。
6.5 シェバーになる母音
名詞において
① 強勢前々音節で開音節にある「 ָ〇」と「 ֵ〇」と、(דְּבָרִים⇒דָּבָר)
② 強勢前々音節の母音がシェバーにならない場合の、強勢前音節で開音節にある「 ֵ〇」(זוֹכְרִים⇒זוֹכֵר)
はシェバーになる動詞において
① 母音から始まる接尾辞の、前の音節にある中母音と短母音 (קָטְלָה⇒קָטַל)
② 強勢前々音節で開音節にある中母音(קְטַלְתֶּם⇒קָטַל)
はシェバーになる
6.6 名詞の接尾辞での変更例
接尾辞をつけると、最後の音節が動くので、音が自然に変わろうとする。まずは、強勢前々音節の母音が「 ָ〇」か「 ֵ〇」かであれば、シェバーになる。(6.5.1)(דְּבָרִים⇒דָּבָר)(לְבָבוֹת⇒לֵבָב)
しかし、長母音だったら強勢前々音節が変われない。(6.4①) (עוֹלָמִים⇒עוֹלָם)
また、閉音節だったら強勢前々音節が変われない。(6.4②)(מִשְׁפָּטִים⇒מִשְׁפָּט)
上記の二つみたいに強勢前々音節が変われない場合には、強勢前音節が変わろうとするけど、「 ֵ〇」の場合のみ変わる。(מִשְׁפָּטִים⇒מִשְׁפָּט)(מִזְבְּחוֹת⇒מִזְבֵּחַ)
7. 「セゴール型」名詞
ヘブライ語には「セゴール型」という特徴的な名詞がある。その特徴は次の通り:
強勢音節は最後ではなく、最後の前の音節
単数形では、セゴール+セゴールの母音がつく。「〇 ֶ〇 ֶ 〇」
例えば אֶרֶץ בֶּגֶד דֶּרֶךְ מֶלֶךְ נֶפֶשׁ はセゴール型名詞です。次の子音が喉音であれば、セゴールの代わりにパタフにもなれる。(下記の8項を参照)
例えば זֶבַח נַעַרセゴール型名詞の複数形は全部次のパターンの母音になる「~ ָ 〇 ְ 〇」
例えば בְּגָדִים דְּרָכִים זְבָחִים最初の子音が喉音であれば、シェバー( ְ 〇)の代わりにハタフ・パタフ( ֲ 〇)になる。(下記の8項を参照)
例えば אֲרָצוֹת
8. 喉音の変換の特徴
喉音は「ア」系の母音を好む。
喉音はシェバーをまれにしか受けない。ハタフ・パタフ( ֲ 〇)、ハタフ・セゴール、ハタフ・カマツの順に好む。